2015年までの法話

2012年09月

御遠忌(ごおんき)を迎えて(九)

常寂光土(じょうじゃっこうど)

今生きている現実の世を光り輝やかせることは、仏教の最大の目的でもあります。そのために仏教は様々の教えを説き、それに基づく行いを奨励しているといっても過言ではありません。

前回ではその方法の一端として、相対を超えた絶対の世界を見据えることの大切さを述べたのですが、次には現実肯定の生き方とでもいいましょうか。私たちをとりまく環境のすべてが、「みなすばらしい」と思える生き方です。この世は無常であり、さらに衆苦充満(しゅくじゅうまん)<法華経>といって、もろもろの苦しみに満ちています。しかしその苦しみを見方を変えて、楽しみや喜びに方向転換していくことはできないでしょうか。これも至難の業(わざ)ではありますが、すべてのものごとはその裏にちゃんと真実を持っています。その真実に気がつけば、今まで苦しみと思えたものも、実は生きる活力であったということにもなります。

これは「この世の中には無駄なものは何もない」という考えにも通じるところがあります。それは恰(あたか)も私たちの身体が、どの部分をとってみても、それぞれがそれぞれの役割を担っていて無駄がないのと同じです。

どんなものも何かの使命をもって光り輝いていると見る見方です。物の世界ばかりではなく、心の世界もまた同様です。ある出来事に遭遇すると、人はそこにさまざまな感性によって、嬉しい、悲しい、悔しい等、種々な感情が生まれます。しかしどんな思いも、人生を豊かにするものであると受けとめることが、常寂光土に住まう私たちの生き方であります。

融通念佛宗 宗務総長
総本山大念佛寺 寺務総長

吉村 暲英

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