2015年までの法話

2008年11月

使命に生きる

人はだれでも何らかの使命をもってこの世に生れてくるものです。
別の言い方をすればどうでもいいという人はいないのです。
みんな「何かに」「どこかで」「だれかに」必要とされているのです。その証拠に1人が行方不明になったら家族は必死になって行方を捜します。友人や近所の人たちもじっとしてはいないでしょう。捜索願いを出したら国は警察力を動員してでも捜索してくれます。なぜそこまでするのでしょうか? それは人間一人一人の尊厳性に根ざしているからです。

人は誰でも心の中にその人にしかない宝物を持っています。その宝物を"光"と名付けると「一人には一人にしかない光がある」ということになります。これを仏教では「仏性」といって、本来的に持っている仏さまのような清らかな心のことです。

仏性が心の中に鎮(しず)まっていることはみな同じです。大事なことはその仏性が表面にあらわれて、何らかのはたらきをすることです。自分の小さな言動が人を喜ばせ、誰かの役に立ったと感じたとき、人はいちばん幸せを感じるときなのです。いわば仏性の光が輝いたとき、人は本当の幸せを感じるのです。
このように人には仏性があり、その仏性が輝きを出すことができるということが人間の尊厳ということです。

お釈迦さまは生まれられてすぐ「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」とおっしゃったといわれています。これは広い世の中で、私は私の誰にもない仏性を持っているのだということをいわれたものと思います。
人は誰しも使命をもってこの世に生れてくるといいましたが、使命というものは人により異なります。しかし共通しているのは各自の仏性をいかに輝かすかということです。そこにこそ人間の尊厳があり、生き甲斐があります。
お互いがお念仏を称えることをすすめる融通念仏の教えは、光と光が溶け合うことをいうのです。一室にともる電燈の数が多ければ多い程、光も増すのです。私たちは日々の生活の中でその光を大きなものにしていく使命を帯びているのです。

融通念佛宗 宗務総長
総本山大念佛寺 寺務総長

吉村 暲英
お知らせ・法話・新聞一覧へ
2015年までの法話一覧へ